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足の痛みやしびれ 腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症とは、疾患というより、多様な病態を含んだ症候群としてとらえれば理解しやすいです。Macnabs Backacheでは①間欠性の下肢機能障害②慢性の神経圧迫所見の存在③像上の脊柱管狭窄所見④下肢への血流障害の否定の4項目を満たすものを腰部脊柱管狭窄所と定義しています。

<分類>

腰部脊柱管狭窄症の間欠性下肢症状には2つの異なる病態が含まれています。つまり、下肢、臀部、会陰部の異常感覚を特徴とした多根性障害を示す馬尾型と下肢、臀部の疼痛を特徴とした単根性障害を示す神経根型、そして両者の症状を合併した混合型の3つに分類されます。

<病態>

先天性/発育性狭窄

脊柱管は4歳までに最大径に成長しそれ以降は椎体や椎弓根が変化することで脊柱管の形態が変化しますが大きさの変化は少ないです。子宮内での各種因子や軟骨無形性症など遺伝子的要因が影響して先天性狭窄をきたすと感がられています。発育性狭窄と考えられる症例は比較的若年の体格の大きい男性に多く椎体の長軸方向への発育が急速で脊柱管径が小さくなってしまったと推測されています。

変性性狭窄

圧倒的にこのパターンが多いです。Kirkaldy-Willisはthree joint complex(三関節複合体)という概念(関津は椎間板と2つの椎間関節によって支持されている)に基づいて腰椎の変性過程を説明しています。わかりやすく言えば変性による狭窄には椎間板や椎間関節の変性と黄色靭帯の肥厚が大きく関与するということを述べています。

<症状、診察>

まず立位あるいは歩行時に出現、増強する臀部から下肢への疼痛あるいは異常感覚があり、これらによって日常生活(ADL:activity daily living)が制限されるかどうかが重要です。まれに会陰部への異常感覚を訴える方もおられます。

特に脊柱管狭窄症で診断が困難な理由は自覚症状があ主で他覚所見に乏しいことにあります。そのため乏しい他覚所見と一貫しない愁訴のため心因性の問題と判断されてしまうケースがあります。しびれや脱力に関しても同様で麻痺で力が入らないのか、痛みやしびれで力が入らないのかしっかりと所見ととることが重要です。

下肢への放散痛について尋ねる際には診療者は下肢のどの部位へ放散するのかを聞きだす必要があります。このことにより障害神経根の推定が可能となります。

診察室へ入ってくる様子、腰椎の可動性、深部腱反射、知覚障害や筋力低下、膀胱直腸障害の有無も評価、SLRテストおよびFNSTテストが必要です。

(SLRテスト・・下肢伸展挙上テスト straight-leg raising            FNSTテスト・・大腿神経伸展テスト femoral nerve stretch test)

 

特に鑑別疾患として、

股関節疾患、血管性病変が重要です。

股関節疾患(変形性股関節症や大腿骨頭壊死症など)は股関節の他動的可動域検査に伴い疼痛が生じる場合が多いです。まら腰椎正面単純レントゲン撮影を施行する場合には、レントゲン下端に両股関節の関節裂隙が入るように工夫する方法もあります。

血管性病変はASO(閉塞性動脈硬化症)やバージャー病などがあります。脊柱管狭窄症同様に間欠跛行を呈する疾患であるため喫煙歴、動脈硬化性疾患の有無、足背動脈や後脛骨動脈などの触知を調べることも大切なポイントです。

<検査>

基本的にはレントゲンの後にMRIを行うことで確定診断に至ることがほとんどです。(CTでは骨性狭窄や構造に対しては情報量が多いが脊柱狭窄症の程度の評価はMRIに劣る)

MRI

T2強調における矢状断像および水平断像で高輝度の領域として表現されるクモ膜下腔の圧迫状況を確認します。また前額断像(T1強調画像)では神経根の走行がより明らかになり外側性狭窄における狭窄部位の診断に有用です。

脊髄造影検査

入院前提の腰椎穿刺による造影剤注入が必要となり、侵襲性が高く時間的制約が大きい。しかし動的な評価および造影後のCT(CTミエログラフィー)でより詳細な画像を得ることができる。

特に手術を予定する症例については依然として必須の検査となります。

<治療>

保存治療には以下のものが挙げられます

①薬物治療 

非ステロイド性抗炎症薬を代表的に使用しますが現在は様々なタイプの薬剤が用いられています。

②硬膜外ブロック 

硬膜外腔へのステロイド薬注入により症状の軽快を目的とします。

③神経根ブロック

透視下に神経根造影を施行した後に局所麻酔薬(ステロイド薬を用いることもあります)を注入します。神経根に薬剤を注入する(神経根を刺すわけではありません)ため上記治療に比べ効果が高いことが多いです。1-2回の施行で症状が消失あるいは軽快することがあります。

④椎間関節ブロック

椎間関節由来の関連痛に効果があります。

⑤運動療法

様々な運動療法が提案されているが明らかに効果があるといえる運動療法はありません。少なくとも腰椎伸展を強制し疼痛を増悪させるような体操は避けるべきです。

手術療法

上記保存療法で改善がなくADL障害が持続する場合に適応となります。

一般的に受け入れられている手術適応として下記に列挙します

標準的な保存治療を施行しても効果が得られない症例

強い痛みのために歩行が極端に制限されている症例(100m歩けない、数分歩くと立ち止まる必要がある)

明らかな筋力低下例

膀胱直腸障害をきたした症例

ある程度保存治療が効果があっても社会的要求を満たせない(仕事を継続できないなど)

 

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