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痛風

<概念>

痛風性関節炎(gouty arthritis)は、尿酸が関節内で結晶化し、これが関節内で白血球に貪食されて引き起こされる関節炎になります。日本の痛風患者が多く原因として動物性蛋白質の摂取量が増えたこと、飲酒量の増加、社会構造の変化により個人の行動パターンが変化したことなどが背景に挙げられます。

<病因>

痛風(gout)は圧倒的に男性に多い疾患で、男性が98-99%、女性はわずか1-2%であり子供と更年期以前の女性にはほぼ発症しません。これほど男女差のはっきりした疾患も少なく、この理由は尿酸の血液中の濃度(血清尿酸値)が女性では男性より低いからになります。女性ホルモンには腎臓からの尿酸の排泄を促す働きがあり、閉経後に女性ホルモンの分泌が減ると尿酸値は少し上昇します。関節炎は下肢、特に母趾・膝関節に発症しやすいです。母趾MP関節は1番の後発部位で全症例の75%に発症します。発作は約1週間で治ることがほとんどです。

痛風の原因は高尿酸血症(hyperuricemia)であり、尿酸はプリン体の異化によって大半が形成されます。尿酸の多くは腎臓から排出され、残りは腸管で処理されます。高尿酸血症んじょ原因は尿酸の過剰合成、腎臓における排出不良、もしくはその両方があります。痛風発作(gouty attack)が原発性に発症するものを一次性痛風とよび、腎疾患・造血器疾患・薬剤内服などにより引き起こされるものを二次性痛風と分類しています。

<症状、所見>

高尿酸血症患者には精神的ストレスや過度の運動、大食、アルコール多飲、外傷手術などによる急性発作が生じます。発作は夜間に多く起こり熱感や発赤を伴う腫脹が急速に現れ、全身の発熱、白血球増加を伴います。発作は数日〜少なくとも1-2週間で軽快します。

痛風の臨床経過は無症候性高尿酸血症、急性痛風性関節炎、間欠期痛風、慢性結節性痛風の四つに分類されます。最初の痛風発作は大部分が単関節炎です。初期には痛風発作の間隔は数ヶ月〜数年ですが、経過とともに発作の頻度が増加し後には腫脹や機能障害が持続して慢性の経過を取るものがあります(慢性痛風)。進行した時期には尿酸塩血晶の炎症反応のため関節軟骨や軟骨下骨のびらんが生じ、重度の関節変形や機能障害をきたすものがあります。

痛風では通常、発症から約10年ほど経過して結節を形成します。結節後発部位は関節滑膜や耳介軟骨、軟骨下骨、肘頭滑液包、アキレス腱や膝蓋下など体温の低い部分に発生しやすいです。Nishiokaらによる日本人4000人のデータでは耳介が56.5%と最も多く、ついで母趾が32.8%、足関節が8.8%、手指の腱、関節が6.2%、アキレス腱が4.4%、膝関節が3.1%とまとめられています。

膝関節における痛風性関節炎は尿酸ナトリウム結晶の沈着でありX線所見上、偽痛風に認められるカルシウム結晶による石灰画像は認められません。症状が進行し、罹病期間が長期化すると関節破壊や虫食い像を示します。慢性結節性痛風の関節では、通常急性痛風性関節炎では認められないスリガラス様軟部陰影やoverhanging edegeといった特徴的な骨破壊像を確認することができます。

<診断>

血清尿酸値7.0mg/dL以上を高尿酸血症とされます。診断は痛風発作中の関節液中に尿酸ナトリウムの針状結晶があることを証明することです。しかし臨床症状から診断するケースが日常診療では多いです。痛風性関節炎の診断上の注意点としては発作中には血清尿酸値が低値を示すことがある点です。膝の腫脹などで関節穿刺により関節液を採取すれば迅速に鏡検し、尿酸塩結晶の有無を同定することにより早期に確定診断に至り、薬物療法に移行することができます。

<治療>

内科的治療には食事療法と薬物療法の2種類があります。

治療方針は大きく二つに分けられ、一つは急性に生じた関節炎に対する対症療法です。もう一つは尿酸値を下げ尿酸塩の沈着により生じる関節・腎臓に対する症状を予防する治療となります。

痛風性関節炎の応急処置は患部の安静と冷却です。薬物療法はコルヒチン・非ステロイド性抗炎症薬・ステロイドの3剤が選択されます。コルヒチンは痛風発作予兆期に用います。発作期にはコルヒチンは効果が得られず、短期間だけ比較的大量に非ステロイド性抗炎症薬を用いることを原則とします。軽快すれば投与を中止し、非ステロイド系抗炎症薬や多関節に関節炎を生じている症例などではステロイド薬を経口で投与します。

尿酸値を低下させる方法として尿酸合成の元になるプリン体を控える食事療法やアルコール制限、水分摂取、軽い運動の励行があります。これらを行なっても依然尿酸値が高い場合は尿酸降下薬を経口投与します。

痛風の治療は内科的治療が優先されます。そのため外科的治療となる場合は少ない傾向にあります。しかし痛風での骨破壊や結節形成により神経圧迫をきたしている場合、機能障害や感染、瘻孔、美容上問題があるものなどを手術適応とする場合もあります。

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