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高齢者に対する薬物治療のゴールは?

[2022.02.18]

 高齢者の多くは内科系疾患や整形外科疾患、精神疾患、悪性腫瘍など複数の疾患を抱えていることが多いです。それに加えて骨粗鬆症、慢性腎臓病、関節リウマチも含まれます。

 特に今回は骨粗鬆症、慢性腎臓病、関節リウマチについて述べたいと思います。高齢者では加齢により腎臓や肝臓の臓器の予備能力が低下することで薬物に対する反応性も個人個人によって異なる傾向があります。

 さらに加齢によりフレイルが進むことで、転倒や誤嚥など高齢者でよく見られる状態に多く遭遇します。いわゆる「年のせい」と言われる状態です。この身体的フレイルは認知機能の低下や抑うつなどの精神心理的フレイル、独居や経済的貧困などの社会的フレイルと密接に関係しているため、フレイルを考えるためには、精神心理的な要素や社会的な側面に目を向けることが必要となります。

高齢者に対する骨粗鬆症、関節リウマチ、慢性腎臓病の治療上のゴールは?

 最適な治療を実現するためには、当たり前の話ですが本人だけでなく周囲の人たち(家族、医療従事者、介護者)の3者の視点で課題を共有することが大切になります。その中でも上記で述べたように代表的な3つの疾患(骨粗鬆症、関節リウマチ、慢性腎臓病)についてお話しできればと思います。

骨粗鬆症治療のゴール

 骨粗鬆症では骨折の予防を目指すことで要支援や要介護状態に陥ることを防ぎ、自立した人生を長く続けられるようにすることが目標になります。高齢になるにつれて自力では骨脆弱性の改善が困難になり骨折や転倒を起こすことで要支援や要介護になる方が多いです。

 そんな中で骨粗鬆症治療薬であるビスホスホネート製剤が広く普及することで積極的に治療介入することで骨折リスクを低下させることが可能となりました。それが結果的に要支援、要介護となるリスクを低下させることに繋がっています。

 それでも日本では今後しばらくは高齢者が増加することが知られています。そのため骨折患者数は増加する可能性が高く、さらに糖尿病や慢性腎臓病、認知症がある方やステロイドを使用している方においては骨折リスクが高まることが報告されています。(※1)

 当ブログではいくつかに渡り骨粗鬆症治療に対して記事をまとめてきました。それでも今なお医療従事者間においても症状が乏しい、治療効果が実感できないなどの理由で治療の優先順位が低くなっているのが現状です。患者さんにとっても骨折して痛み伴ったり、手術をしたりして辛い経験をしたなら分かりますが、症状もないのに骨折を予防したいという意識がなかなか生まれないことも納得できます。骨密度は血糖値や血圧と違って変化率が小さく治療効果を実感しづらいことも原因の一つと言えます。そのため治療する側が一方的にならず、患者さんにも納得頂いた上で双方向の理解のもと、積極的に治療介入することが大切だと考えます。

関節リウマチのゴール

 関節リウマチの治療ゴールは長期的には、同世代の健康な方と同じ生活を送ることが出来るようになるのを目指します。短期的には臨床的寛解を目指し、薬物治療で関節炎を抑えて日常生活動作(ADL)を高め、関節破壊の進展を阻止することが必要となります。

 高齢発症の関節リウマチでは、若い時の発症と違って急激に発症し、大関節を痛めることが多いため1−2週間で寝たきりとなってしまうこともあります。速やかな治療を必要とする反面、関節リウマチの鍵となるメトトレキサートは免疫抑制薬で腎臓で排泄されるということもあり安全性に十分配慮しなければなりません。そのほかの薬剤(疾患修飾抗リウマチ薬、いわゆるDMARDsや生物学的製剤など)も含め、免疫機能の低下から感染症リスクが高まる可能性もあるため慎重を要します。

 さらに関節リウマチの薬剤は高額なものが多いため臨床的寛解を達成した後、自己都合で治療中断したりしないような環境作り、病識の理解も必要となります。

慢性腎臓病のゴール

 慢性腎臓病治療においては、何よりもまず透析に至らないようにすることが第一に重要となります。透析されている方にとっては透析をしながらでも自立した生活を送れるようになることがゴールとなります。

 しかし慢性腎臓病は関節リウマチと違って痛みを伴いません。透析導入直前まではほとんど自覚症状がないため、患者さんやご家族に重症という意識はなく治療に対する協力が得られないことが大きな問題となります。このことは骨粗鬆症にも当てはまります。糖尿病性腎症で透析を導入した場合の5年生存率は55.0%(※2)で非小細胞肺癌のステージIIの5年生存率(※3)とほぼ変わりません。

 また、慢性腎臓病患者に限らず、一般的に高齢者では服用している薬剤が多くなりがちです。定期的な腎機能評価を行いつつ漫然と同じ薬を投与することも避ける必要があります。

本日は以上となります。

【参考文献】

(※)高齢者に薬物治療を考える 中外製薬株式会社

(※1)Hippisley-Cox J,et al.BMJ.2012;344:e3427.

(※2)日本透析医学会統計調査委員会.わが国の慢性透析療法の現況

(※3)がん情報サービス.院内がん登録5年生存率集計結果

https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/hosp_c_reg_surv/hosp_c_results.html

 

 

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