免疫・炎症疾患の疫学〜関節リウマチなど〜
免疫、炎症疾患に含まれるほとんどの疾患は頻度が少なく厚生労働省指定難病となっています。
今回は 代表的な免疫・炎症疾患の疫学について簡単に述べたいと思います。
関節リウマチ
関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA)の有病率は人口の0.5-1%前後と言われています。男女比は1:3で好発年齢は40-60歳、50-60歳代の有病率が高いです。手足の関節痛を訴える人の数は日本全国で560万人、人口の4.5%との調査があり、その4-9人に1人がRAということになります。
RAの平均死亡率は1986年の64.5歳から2007年の71.5歳に改善していますが日本人全体の平均寿命と比較すると長期予後は不良と言えます。予後に関連する因子として我が国では悪性腫瘍、肺炎、間質性肺炎などの呼吸器疾患、脳血管疾患、心筋梗塞との報告があります。
また、関節外に難治性症状を伴う悪性関節リウマチはRAの1%程度であり決して少なくありません。発症年齢のピークは60歳代で男女比は1:2とRAより男性の割合が高い傾向にあります。血管炎以外の臓器障害として間質性肺炎を合併すると予後不良です。
全身性エリテマトーデス(SLE)
全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)は2000年49436人、2019年61060人と増加傾向です。有病率は10万人あたり50人と推定され約90%が女性です。1950年代の5年生存率は40%でしたがステロイド治療導入後に改善し1980年代には90%以上となっています。最近では免疫抑制薬の使用が可能となりさらに成績が向上しています。
ステロイドの副作用とSLEの予後と関連する臓器障害はお互いに関わっていると考えられており、免疫抑制薬の作用によるステロイド減量など、治療の適正化による長期予後の改善が期待されています。
脊椎関節炎(SpA)
強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis:AS)は欧米では患者の90%以上がHLA-B27陽性ですが我が国ではHLA-B27の陽性率が低いことが特徴です。平成30年度は3064名の患者が登録されています。
近年、世界的には脊椎関節炎(spondyloarthritis:SpA)を生ずる疾患を主に脊椎や仙腸関節など体軸関節が罹患する体軸性と、主に末梢関節が罹患する末梢性に分類しています。
体軸性脊椎関節炎(axial SpA:axSpA)として従来のASと仙腸関節のX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(non-radio graphic axSpA:nr-axSpA)とする分類基準が用いられています。以下のような疾患も一部axSpAに含まれます。
- 乾癬性関節炎(psoriatic arthritis)
- 炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)
- 反応性関節炎(reactive arthritis:ReA)
我が国におけるSpA全体の頻度は明らかではありませんが、SpAは分子標的薬が有効な治療となることから疾患の認知が進んでおり今後増加することが予想されています。
この話題は次回に続きます。
本日は以上です。
<参考文献>
難病情報センター;特定医療費(指定難病)受給者証所持者数
日本医師会雑誌;免疫・炎症疾患のすべて)
むつみクリニック 整形外科・骨粗鬆症専門外来
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