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慢性閉塞性肺疾患(COPD)だと骨折しやすくなるのか?

[2021.04.23]

慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)はタバコの煙を主とする有害物質を長期に吸入暴露することで生じる肺の炎症性疾患で、気流閉塞を基本病態とした呼吸機能低下をもたらします。

COPDは局所的な炎症による肺疾患ですが、骨粗鬆症やサルコペニアをはじめとしたさまざまな全身疾患を合併します。COPDの病期が進むと筋肉量の低下を伴う「やせ」が見られることが知られています。一方、骨粗鬆症などの合併症は必ずしも病期の進行、すなわち呼吸機能低下に依存しておらず、全身性炎症や他の要因が複雑に関与していると想定されています。

<COPDと骨粗鬆症>

以前からCOPD患者と骨折の関連性は指摘されていました。しかし一方で因果関係や機序については未確立です。the global longitudinal study of osteoporosis in women(GLOW)研究において、2年の観察期間でCOPDの骨折率は6.2%,ハザード被1.5倍と有意に骨折リスクが高いことが示されています。イギリスのある研究報告によるとCOPD患者は大腿骨近位部骨折は男性で1.34倍、女性で1.23倍とされています。日本人COPD患者男性136人(平均年齢71.6歳)における検討でも椎体骨折は79.4%と高率に認められました。

最新のメタ解析によるとCOPDにおける骨粗鬆症の有病率は38%でBMI18.5未満のやせとサルコペニアの存在が明確な骨粗鬆症のリスク因子として同定されました。

<そもそもなぜCOPDで骨折リスクがあがるのか?>

COPDでは健常人と比較して骨密度が低く病期の進行とともに低下します。ステロイド未使用のCOPD閉経後女性を対象とした骨生検において、海綿骨骨梁や骨梁連結性の低下、皮質骨多孔化が示されています。さらにCOPDではIL-1やIL-6,TNF-αが高値を示すことも知られており全身性炎症が骨質劣化に寄与している可能性があります。

<COPDとフレイル、サルコペニア>

転倒と骨折は密接に関連しています。そのため転倒予防は骨折抑制につながります。転倒は筋力低下、バランス障害、栄養障害、心理的状態(うつ等)、起立性低血圧など多くの因子に影響を受けます。しかしCOPDのにおける転倒のリスク因子には十分な解析がありません。その一方で高齢者におけるさまざまな老年症候群と関連する指標としてフレイルが挙げられています。オランダの地域コホート解析ではCOPDの重症度に依存してフレイルの有病率が増加することが示されています。

転倒やフレイルの背景にはサルコペニアが存在し、サルコペニアの発症にも低栄養、活動性低下、代謝異常、血流障害など多くの因子が関与しています。

COPD外来患者622人の検討では15%にサルコペニアが認められました。さらにCOPDでは片脚起立うやtimed up-and-go testなどのバランス障害の指標が有意に低下していることも報告されています。

 

このように、COPDは骨粗鬆症と関連性の高いフレイル、サルコペニアとも密接に関連していることが考えられています。

糖尿病とともに、運動器疾患にとって重要な疾患だという認識を持っていただければ幸いです。

本日は以上です。

(参考文献 慢性閉塞性肺疾患  井上大輔;The Journal of Japan Osteoporosis Society Vol.7 No.1 2021 197-201)

 

むつみクリニック 整形外科・骨粗鬆症専門外来

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