腰痛診療ガイドラインをわかりやすく説明 その①
本日は腰痛についてお話しします。
腰痛といっても色々な種類があります。先日本ブログで紹介した慢性痛に含まれる慢性腰痛や、ギックリ腰と言われる急性腰痛が代表的な疾患でしょう。
さらには変形性腰椎症(主に加齢によって腰椎や周囲組織が変形、編成を来すもの)や感染、腫瘍性疾患、骨折などが挙げられます。
日本整形外科学会の調査では、腰痛を持つ患者さんは3000万人いると報告されています。実際、外来診療の中で腰痛を訴えて来院される患者様は圧倒的に多いです。
このように身近な疾患だからこそ、最新のガイドラインを基に皆さんにもわかりやすく情報共有していけたらと思います。
以下ガイドライン上の表記をなるべく採用して抜粋していきます。
①腰痛の病態とは何か?
2012年の腰痛診療ガイドラインでは、欧米の論文をもとに非特異的腰痛が85%を占めると記載されていましたが、近年の報告によれば、腰痛の原因の内訳は椎間関節性22%、筋筋膜性18%、椎間板性13%、狭窄性11%、椎間板ヘルニア7%、仙腸関節性6%と75%以上で診断が可能で、診断不明の非特異的腰痛は22%しかなかった。
→丁寧な診察、検査をすることで原因の特定は可能、しかし適切な検査が可能な施設においてという条件があります。
②腰痛の自然経過はどのようであるか?
- 急性腰痛症は自然に軽快することが多く、経過は概ね良好である
- 慢性腰痛の自然経過は急性腰痛に比べて悪い
- 心理社会的要因は腰痛を遷延させる(長引く)
- 身体的・精神的に健康な生活習慣は腰痛の予後に良い
③腰痛は生活習慣と関係があるか?
- 体重過多と肥満が腰痛の危険因子であり、標準体重の維持が腰痛の予防に関連するという報告がある。
- また日常的な運動をしている人と、運動をしていない人を比べると運動していない方がより腰痛を発症しやすい。
- 腰痛の予防には健康的な生活習慣、穏やかでストレスが少ない生活が推奨される。
④腰痛を有する患者の危険なサインは?
これは医療者(特に医師)が見逃してはいけないサイン(red flagと言います)のことを指します。以下のものが挙げられます。
- 発症年齢<20歳または>55歳
- 安静時痛・胸部痛
- 癌/ステロイド治療/HIV感染の経験ある方の腰痛
- 低栄養や体重減少
- 足の痺れ、脱力などの神経症状
- 脊柱変形
- 発熱
このことを常に念頭に入れて診療に当たっています。私はこれに長時間持続する腰痛の場合もリストに入れています。
⑤腰痛診断において有用な画像検査は何か?
- 腰痛に対するX線検査は原因の初期診断に意義がある
- 危険信号(red flag)や神経症状を呈する場合はX線に続いてMRIが推奨される
→何も撮らない、という選択肢はありますがX線なしだと患者様に説明できないのと、少なくとも明らかな骨折などの除外診断には有用な検査です。そこまで高い検査でもありません。
本日は以上です。腰痛ガイドラインはまだ続くので後日後半をお話ししたいと思います。ありがとうございました。
むつみクリニック 整形外科・骨粗鬆症専門外来
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