骨粗鬆症と橈骨遠位端骨折
久しぶりに骨粗鬆症関連のお話になります。
早速初めて行きましょう。
今回のテーマは『骨粗鬆症と橈骨遠位端骨折』についてです。
低エネルギー外傷による橈骨遠位端骨折の背景要因には骨粗鬆症と易転倒性があると言われています。橈骨遠位端骨折は骨粗鬆症患者の初発骨折として最も頻度が高いです。立った位置以下からの転倒により橈骨遠位端骨折を生じた50歳以上の日本人女性101例について腰椎骨密度を測定したところ、30.7%はYAMの70%以下、58.4%は80%未満でした。
これによると橈骨遠位端骨折患者の過半数は骨粗鬆症に対する薬物治療開始基準を満たすことになります。
立った位置以下からの転倒により受傷した橈骨遠位端骨折閉経後女性患者の平均年齢は70.2歳で、他の脆弱性骨折と比べて若い傾向にあります。橈骨遠位端骨折患者の骨粗鬆症に対する認識は患者自身だけでなく、我々医療者側にも乏しいです。
実際に、50-75歳の橈骨遠位端骨折患者192例について調査した結果、骨粗鬆症の治療を受けた人の割合はわずか10.9%でした。50歳以上の脆弱性骨折患者を年齢と性別で調整し、骨粗鬆症治療群と非治療群に分けて比較すると薬物治療により49.5%の二次骨折抑制効果が認められました。
このことから以下に骨粗鬆症治療の重要性が大事が理解できるかと思います。
背景要因にある骨粗鬆症と易転倒性を評価し、必要があれば治療介入する準備を常に想定しておく必要があると言えます。
橈骨遠位端骨折を受傷された患者さんの多くは、
「自分だけは大丈夫と思っていた。骨折なんてするとは思っていなかった」
と口を揃えておっしゃります。これは正常化バイアスと言います。
橈骨遠位端骨折は骨粗鬆症の初発骨折であり、ロコモティブシンドロームの初期のイベントと強く認識しておく必要があります。その上で橈骨遠位端骨折を健康寿命延伸のきっかけに活用することが重要です。
橈骨遠位端骨折患者の背景因子を評価し、必要に応じて骨折を起こした患者の生活指導、骨粗鬆症に対する薬物治療、易転倒性を改善するための運動療法などを組み合わせます。
橈骨遠位端骨折後の大腿骨近位部骨折や脊椎圧迫骨折、ロコモティブシンドロームを防止して寝たきりを防ぎ、健康寿命を延伸することを目標に日常診療に取り組んで行きたいと思います。
(参考文献 酒井昭典,骨粗鬆症と橈骨遠位端骨折;The Journal of Japan Osteoporosis Society Vol.7 No.1 2021,5-9)
むつみクリニック 整形外科・骨粗鬆症専門外来
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