骨粗鬆症予防には食事が大切ってホント?
久しぶりに骨粗鬆症関連の話題になります。以前にも数回にわたって骨粗鬆症に対して食事療法が大切だ、という事をこちらのブログで述べてきました。
骨粗鬆症の発症には色々な要因が存在します。以前から骨粗鬆症はもはや生活習慣病の1つに位置づけられるともお話ししました。骨粗鬆症といえば、カルシウムをとればいいんでしょ?と思われる方が大半だと思います。
確かにその通りなのですが、それ以外にも多くの栄養素が関係しています。食事は成長期の骨量獲得や骨粗鬆症の予防にも大きく関与します。
基本となるのは食事摂取基準
慢性腎臓病や心不全、高血圧、糖尿病での食事療法と違い骨粗鬆症の場合には、合併症がなければ基本的には特に制限する栄養素はありません。(例えば高血圧では塩分制限、糖尿病ではエネルギー制限、腎臓病ではタンパク質の制限、といった具合に)
私たちが健康を保持、促進し生活習慣病を予防し、ひいては健康寿命を伸ばすためにエネルギーや栄養素をどれくらい食べればよいかを示したものは「日本人の食事摂取基準」として厚生労働省から5年ごとに改訂され発表されています。
その日本人の食事摂取基準2020年版の中では、生活習慣病として、高血圧、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病の4つが取り上げられています。しかしながら骨粗鬆症は今のところ含まれていません。それでも骨粗鬆症の食事療法は、食事摂取基準をもとに考えることになります。
エネルギー
エネルギーに関しては、適正体重を維持するために量が必要となります。推定エネルギー必要量が皆さんがよくご存じのBMI(body mass index)を使用して計算します。成人の場合にはエネルギー必要量はエネルギー消費量と等しい事が基本となります。当然ですが、エネルギー摂取量が必要量を上回ると体重が増加し、エネルギー摂取量が必要量を下回ると体重が減少することになります。これらの事から、体重が維持できていればエネルギー摂取量は適切ということになります。(過度な肥満や痩せを除く)体重は身長の影響をうけるので、適切な体重の値を一律に示すことは困難です。したがって現在の食事摂取基準では身長と体重から計算されるBMIがエネルギー摂取の指標として用いられています。参考までに以下に示します。
- 目標とするBMIの範囲
18-49歳 18.5-24.9
50-64歳 20.0-24.9
65-74歳 21.5-24.9
75歳以上 21.5-24.9
たんぱく質
たんぱく質はサルコペニアやフレイルの予防はもちろんの事、骨の健康にとっても重要となります。骨の有機成分であるコラーゲンの生成や維持のためには材料となるアミノ酸が必要です。
食事からのたんぱく質摂取、つまりアミノ酸の摂取が足りないと筋肉を分解してアミノ酸を供給するようになり、サルコペニアに陥る危険性が高くなります。さらには筋肉量や筋力の低下は転倒のリスクを高めることにもつながり、当然のように骨折の発症につながります。
このように、たんぱく質は骨と筋肉、すなわち運動器の健康に非常に重要な役割を果たしている栄養素となります。たんぱく質の推奨量は体重当たり0.92g/kgで、体重1kgあたり1gと考えるとシンプルで分かりやすいです。エネルギー比率で考えると、摂取するエネルギーの13-20%(50-64歳では14-20%、65歳以上では15-20%)をたんぱく質で摂取する事が目標となります。
カルシウム
カルシウムは言うまでもなく骨の健康に不可欠な栄養素です。国民健康、栄養調査では日本人のカルシウム摂取量は500mg/日程度であることが分かっています。(※1)これに加えて1日200mgあたりを追加で摂取することが望ましいです。ちなみにカルシウム200mgを摂取するにはどの食材をどれくらい取ればよいか、ということについては以下に示します。
- 牛乳 182g
- ヨーグルト 167g
- プロセスチーズ 32g
- 干しエビ3g
- 木綿豆腐235g
- 小松菜118g
- 切干大根40g
いかがでしょうか?干しエビ3gは結構な量と思います。
ビタミンD
ビタミンDもまた、腸からのカルシウム吸収をうながし、骨の健康に不可欠な栄養素になります。その一方で紫外線に当たることで皮膚で作られます。つまり食事によって取り入れるパターンと皮膚でつくられるパターンの2つが存在することになります。その中でも25(OH)ビタミンDの血中濃度がビタミンDの栄養状態の指標として使用されています。近年この25(OH)ビタミンD濃度の基準値が発表されて基準値よりも低い人が多いことが報告されています。(※2)
食品からビタミンDを摂取するには、何よりも魚類になります。特にサケにはビタミンDが豊富に含まれています。
ビタミンK
骨粗鬆症の治療薬としても用いられているビタミンKですが、食品だと納豆に多く含まれています。(ご存じの方も多いかと思います)納豆摂取量の多い地方では骨折が少ないということも報告されています。ただしビタミンKには血液凝固を促す作用があるためワーファリンを服用している場合は食べてはいけません。
ビタミンB群
B群ビタミン類であるビタミンB6、B12、葉酸は血液の中のホモシステインと関係していることが知られています。(ホモシステイン・・骨密度とは独立した骨折の危険因子)
それぞれ1つ1つの栄養素の不足はもちろんのこと、複数の栄養素の不足が積み重なることによって新規骨折の発生が多くなっていることが分かっています。(※3)これらの事は非常に重要で、特定の栄養素のみをかたよって摂取するのではなく、たんぱく質も含めたバランスの良い摂取が基本となります。
本日は以上となります。
【引用文献】
※上西 一弘:骨粗鬆症の食事療法について.The Journal of Japan Osteoporosis Society Vol.7 No.4 2021.579-583
※1 厚生労働省:令和元年国民健康栄養調査結果の概要.2019 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf
※2 Tamaki J et al:Total 25-hydroxyvitamin D levels predict fracture risk:results from the 15-year follow up of the Japanease Population-based Osteoporosis(JPOS)Cohort Study.Osteoporos Int 28:1903-1913,2017
※3 Kuroda T et al:Multiple vitamin deficiencies additively increase the risk of incident fractures in Japanease postmenopausal women.Osteoporos Int 30:593-599,2019
新型コロナウイルスの関連記事は以下になります。
あわせてお読みください♪♪
骨粗鬆症と新型コロナウイルス
コロナウイルスワクチンの筋肉接種ってどうするの?
コロナウイルスワクチンはどちらの腕に打てば良いのか?
アレルギーを持つ方へのコロナウイルスワクチン接種注意点とは?
むつみクリニック 整形外科・骨粗鬆症専門外来
♫友達登録していただくとスムーズに予約、問診できます♫
住之江区の整形外科 内科 外科 小児科 リハビリなら「むつみクリニック」へ是非お越しください。詳しくは診療担当表もご覧ください♪♪