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骨粗鬆症(骨粗しょう症)検診は受けた方が良いのか?

[2023.01.13]

あけましておめでとうございます。

本年もむつみクリニックをどうぞ宜しくお願い致します。

さて今回は骨粗鬆症(骨粗しょう症)検診に関する内容となります。

骨粗鬆症(骨粗しょう症)検診の重要性

 骨粗鬆症を原因とする骨折は増加傾向にあり、その原因は超高齢化社会と骨粗鬆症の未治療にあるといわれています。

厚生労働省により2003(平成15)年に施行された健康増進法に基づき骨粗鬆症検診は開始されました。

 2019年(令和元)年度の検診受診率は62.2%となっています。骨粗鬆症検診率の高い自治体は要介護率および人工骨頭挿入率が低いことが報告されていて検診の重要性が指摘されています。

 つまり骨粗鬆症検診を行い適切な治療を早期に受けることで大腿骨近位部の骨折リスクを減らし結果として手術を回避できるというわけです。

 骨粗鬆症による骨折は寝たきりや健康寿命を短縮する原因となり得るため積極的に脆弱性骨折を予防すること、つまり骨粗鬆症検診を受けることは介護の観点からも重要となります。

 それと同時に、国が提唱する【人生100年時代】を迎える中で生活習慣を改善し、運動器の健康を維持するよう主体的に健康づくりに取り組むことは健康寿命を延伸することにつながります。

地域住民の骨粗鬆症検診に対する認識と予防行動

 地域住民の骨粗鬆症検診に対する認識と行動に関する研究によれば、女性は骨粗鬆症に起因する骨折が生じてしまうという心配と自分に骨折が起こる可能性に対する心配に対して認識が高く、特に骨粗鬆症の診断歴のある女性は自分に骨折が起きるのではないかと不安に思う傾向が強かったことがわかりました。

 骨粗鬆症のリスクが高い50歳代以上の人を対象とした調査では、骨粗鬆症は骨が脆くなり骨折しやすくなることを7割以上が認知していることが報告されています。

 さらに中高年の女性は、骨粗鬆症を予防しなければならないと考えている人が9割以上で、閉経後の女性や骨粗鬆症治療中の患者においては「骨折して寝たきりになること」や「要介護になり、家族に迷惑がかかること」を不安に思っていることも報告されています。

 この研究の対象者は約7割が女性であり、骨折することで生じる生活への支障や寝たきりへの不安を持って要ることがわかります。

 違った側面として骨粗鬆症の診断歴のない人にとっては骨粗鬆症という病気が自分事として感じられず骨折が自分にも起こり得る事として考えにくいということがわかりました。

 予防行動に関しては、この研究からは女性や骨粗鬆症の診断歴がある人は骨粗鬆症の予防に取り組んでいることが多く、特に女性は骨粗鬆症対策に非常に積極的であることが示されました。     骨粗鬆症予防に対する認識調査では、女性は男性に比べて骨粗鬆症に対して正しく理解しており予防的行動を実践していることが報告されています。

 骨粗鬆症は女性に多く見られ、70歳代では3人に1人、80歳代以上では2人に1人が有しているといわれています。

 それに対して男性や骨粗鬆症の診断歴のない人は骨折に対する危機意識が低い傾向があります。

 現在骨粗鬆症は広く知られる疾患となっているものの症状の認知率は2-3割にすぎず、骨粗鬆症治療を行っていない人の約6割は「年齢」が骨粗鬆症の危険因子であることを認識しておらず骨密度検査や骨粗鬆症検診を受けたことがなかったと報告されています。

 また男性はサルコペニアと骨粗鬆症を同時に起こす割合が女性よりも高いにも関わらず、骨粗鬆症の疾病過程、危険因子、予防について最低限の知識しか持っておらず骨粗鬆症に対する知識が十分でないことが指摘されています。

 高齢になるにつれて骨折のリスクが高まるのは女性同様に男性も同じでありリスクとして骨粗鬆症を認識してもらえるよう骨粗鬆症予防に関する啓発を推進する必要があり骨粗鬆症検診を受けることの重要性を理解してもらうことが大切になります。

 急速な高齢化の進展により65歳以上の人口が約30%(2021年現在)であることを踏まえると、骨粗鬆症予防のための戦略として骨粗鬆症検診や当院のような地域に根ざすクリニックで骨折リスクの認識を高め検査を普及してゆくことが理想となります。

 同時にマスメディアによる骨粗鬆症の予防行動に関するアドバイス、骨粗鬆症による骨折で日常生活動作(activities of daily living:ADL)や生活の質(quality of life:QOL)が低下した人の体験談を知る機会は、予防行動の重要性を認識するために有効であるといえるでしょう。

骨粗鬆症(骨粗しょう症)検診と並ぶフレイル検診の重要性

 上記は骨粗鬆症検診について述べてきました。以前もブログでお話ししたように骨粗鬆症とフレイル、サルコペニアには密接な相関があります。

 我が国は21世紀に入り少子高齢化が顕著となり2005年には高齢化率が世界一となりました。その後も高齢化が進み2007年には高齢化率21%を超える世界初の超高齢社会に達しました。

 直近の2021年には高齢化率29.1%となり3640万人の高齢者を有する国となりました。近年注目されている高齢者の健康寿命を損なう病態に「フレイル」があります。

 骨粗鬆症による脆弱性骨折、要介護状態への移行、これらと同様フレイルもまたこれからの我が国にとって重要な課題となります。

 厚生労働省は75歳以上を対象に実施している後期高齢者医療制度の健診で、人口構成上、後期高齢者が前期高齢者を初めて上回る2020年度を契機にフレイルの把握に取り組んでいます。

 「フレイル」は身体的因子、精神心理的因子、社会的因子と加齢による\虚弱化が相関して生じます。

 老化のサインを見逃さず、高齢者の自立を多面的に支援し高齢者を元気にする事を目的としています。

 これまでは老化現象として見過ごされてきた事象を「フレイル」という用語を用いることで医療や介護の意識改革を目指しています。

 すなわちフレイルを「高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態」と位置付けました。

 フレイルは日常生活機能低下で何らかの支援が必要な要支援1-2に相当する将来的には要介護になる危険性が高い状態です。

 フレイル健診は高齢者のフレイルに関する関心を高め生活改善を促す目的もあることから、「フレイル健診票」は特定健診時に限らず、市町村の介護予防、日常生活支援総合事業における通いの場は医療機関など様々な場面での活用が期待されています。

 これまでの高齢者に関わるエビデンスを生かしつつ、保健事業、回答者の負担を考慮して健診票は作成されています。

 現在主に使われている健診票は、厚生労働省がフレイルの身体的、精神的、社会的側面をチェックするために作成した「介護予防のための生活機能評価に関するマニュアル(改訂版)」の基本チェックリストを土台としています。

 すなわちフレイルの多面的評価のために身体的フレイルチェックのみならず、精神心理的および社会的フレイルまで含まれています。

 わが国を含む28カ国の60歳以上の高齢者12万人超を対象とした研究で高齢者におけるフレイルのリスクを初めて世界規模で定量化したものがあります。

その研究結果から以下の5つの内容が提言されました。

 ①フレイル発生率は高所得国に比べて低中所得国で高い

 ②高齢者のフレイルリスクは世界的な問題である

 ③人口の高齢化が進んでいる国が直面する課題である

 ④筋力強化トレーニングやタンパク質摂取量の増加はフレイル予防や進行抑制に有用な可能性がある

 ⑤定期検診によるフレイルのリスクを評価し早期に適切な介入をすべき

 これら5つの内容は主題である骨粗鬆症の問題にも共通する要素であり、特に③④⑤においてはそっくりそのまま骨粗鬆症検診であったり骨粗鬆症治療にも該当するといえるでしょう。

骨粗鬆症検診はどこで受けられるのか?

 それでは骨粗鬆症の検診はどこで受けられるのでしょうか?

 基本的にはお住みの各自治体で受けることができますが、例えば当院が属する大阪市では18歳以上の市民であればどなたでも保健福祉センターで受けることができます。(詳細はこちら)

 検査方法は超音波パルス透過法を利用した踵骨(かかとの骨)の骨量を測定します。

 骨粗鬆症学会が推奨しているDEXA法とは異なりますが、踵骨での検査は簡便であるためキッカケとして有用です。

 検診結果は当日に知ることができ、結果が要精検(医療機関の受診が必要)となった場合、大阪市骨粗しょう症検診要精密検査協力医療機関での精密検査を推奨されます。

 当院は近日この協力医療機関として登録されますので住之江区にお住まいの方だけでなく精密検査の対象となった方はお気軽にご相談ください。(スマホやパソコンからのネット予約やウェブ問診が便利です)

 他の自治体でも同様に骨粗鬆症検診を実施していますが、若干対象者が異なっていたりします。

 例えば20歳から39歳までの女性は1回、40-70歳の女性は40歳、45歳、50歳、55歳、60歳、65歳、70歳の節目年齢(5年に1回)に受診可能といった感じに検診を受けることができる所もあります。検診後に保健師の結果説明や管理栄養士によるアドバイスも受けることができたりもするようです。

骨粗鬆症治療の普及と継続への取り組みのために何が必要か

 骨粗鬆症の臨床的イベントは脆弱性骨折です。後期高齢者や超高齢者が主な介入対象となるため、動機付けと治療継続に難渋するすることが多いです。

 海外で始まった骨折リエゾンサービス(fracture liaison service:FLS)が大きな成果を上げたことから、我が国では日本骨粗鬆症学会を中心に、FLSと一次予防・啓発・教育活動の普及を目指した骨粗鬆症リエゾンサービス(osteoporosis liaison service:OLS)が立案され、全国的な広がりを見せています。

 海外において、1993年にスコットランドのグラスゴーを皮切りに50歳以上の骨粗鬆症性骨折患者に対してメディカルスタッフが患者評価・管理・連携を行う診療支援システムとして開始されました。

 実際に骨折の発生率の低下が報告されると、各国が続々と追随し、骨折後に適切な介入と経時的なフォローアップを行うことで服薬継続率の向上と再骨折率の低下ならびに死亡率の低下が達成されることが確認されました。

 海外で展開されたFLSが、すでに脆弱性骨折を発生している患者への二次骨折予防に特化しているのに対し、日本骨粗鬆症学会では、骨折一次予防ならびに啓発活動までを視野に入れた活動で多職種連携・診療支援をすべきと考えています。

 その結果FLSを包括したOLSが作られ、「初発の骨折を防ぎ、骨折の連鎖を断つ」ことを目的としています。

 上記のことを踏まえ、当院では骨粗鬆症専門外来を設置するとともに、定期的に院内職員を対象として職種に関わらず院内勉強会を開催しています。

 骨粗鬆症の知識を共有することはもちろんの事、骨粗鬆症治療を継続すること、疾患概念を再認識する等、プラスに働いていることが実感できます。

 併せて、市役所などでも行われている生活習慣病の糖尿病教室や、市民公開講座など、行政機関とも連携し既存の枠組みの中に骨粗鬆症に対する啓蒙的な活動を取り入れてゆくことが重要であると考えます。

 長文でしたが、お読みいただきありがとうございました。

 これを機に一度、ご自身の骨密度を調べてみてはいかがでしょうか?骨粗鬆症検診はお住まいの自治体のホームページより調べられます。また精密検査が必要となった際、お近くにお住まいの方は是非当院骨粗鬆症外来をご利用ください。

【参考文献】

  1. Reiko Okuda et al:Factors related to the actual situation of community residents perception of osteoporotic fractures and their preventive behaviors.The Journal of Japan Osteoporosis Society 8 (4):575-582,2022
  2. 太田博明他:フレイルの多面性とその評価法.The Journal of Japan Osteoporosis Society 8 (4):656-664,2022
  3. 藤原佐枝子他:骨粗鬆症予防の普及への取り組み-一次骨折予防の視点から-.The Journal of Japan Osteoporosis Society 8 (2):270-274,2022
  4. 鈴木敦詞他:骨粗鬆症治療の普及と継続への取り組み〜OLSの役割について〜.The Journal of Japan Osteoporosis Society 8 (2):275-279,2022

むつみクリニック 整形外科・骨粗鬆症専門外来

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