慢性腎臓病と骨粗鬆症
慢性腎臓病とは
蛋白尿などの尿異常や腎形態異常、血液検査で糸球体濾過率(GFR)<60ml/分/1.73m2未満の腎機能障害が3ヶ月以上続くと慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)と定義されます。この中には生活習慣病に方が大半を占めています。我が国のCKD患者は1330万人と推定されており20歳以上の8人に1人がCKDと言われています。しかしながらCKDの初期はほとんど無症状であり進行してから自覚するCKD患者さんが多いです。そのため33万人を超える末期腎不全患者が透析や腎移植を受けています。さらに腎臓は骨を維持する機能を有するため腎機能が低下すると骨粗鬆症になります。また腎機能の低下による栄養状態や運動能が低下するため筋肉量も減少します。そのためCKDでは骨折や転倒リスクが増大し整形外科と腎機能障害は切っても切り離せない関係にあります。
生活習慣病と慢性腎臓病(CKD)
CKDの定義と生活習慣病の割合
CKDは腎機能の低下のみならず心筋梗塞や脳卒中といった心血管系疾患や死亡のリスクが高まります。推定GFRが低下すると心血管病の発症率は段階的に増加します。推定GFRが45-59(単位省略)ではアルブミン尿が<10mg/gCr未満でも心血管死亡は1.5倍上昇しアルブミン尿が300mg/gCr以上に上昇すると4.3倍にも上昇します。わが国においてもクレアチニンクリアランスが70ml/分以上の人に比べて全死亡リスクが40-70ml/分の人で2.3倍、40ml/分未満の人で5倍上昇することが示されています。
CKDが進行すると末期腎不全になり腎移植もしくは透析を必要とします。慢性維持透析患者の原疾患のうち39%が糖尿病性腎症で1番の原因疾患となっています。次に高血圧や動脈硬化に起因する腎硬化症も10.8%であり高齢化に伴い最も増加しています。したがって生活習慣病に起因するCKDが慢性透析患者の大多数を占めていることになります。
腎臓は骨および筋肉を維持するための臓器でもある
腎臓は骨維持に対して重要な役割をしています。腎の尿細管は尿のカルシウム排泄を調節しており腎機能が低下すると血液中のカルシウム濃度が低下します。さらに腎臓はビタミンDの活性化に関与しているため腎機能低下によりビタミンD活性が障害され骨粗鬆症がします。同時に副甲状腺ホルモンが分泌されることで骨吸収がさらに進行します。
くらえて腎臓は筋肉維持に対しても重要な役割を持っています。糖の代謝産物からのカルボニルストレスが進行すると終末糖化産物(AGEs)が増加します。皮膚のAGEsの増加に伴い握力や下肢筋力の低下が関与しており、カルボニルストレスは腎障害とともに筋力を低下させることが示唆されています。
(参考文献;慢性腎臓病における骨折・転倒リスクと運動;The Journal of Japan Osteoporosis Society Vol.7 No.1 2021 191-196)
ここまででも腎障害と骨粗鬆症 転倒、骨折リスクの関連性は理解できると思いますが、次回は続きになります。
本日は以上です。
むつみクリニック 整形外科・骨粗鬆症専門外来
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