生活習慣病と骨粗鬆症
日本人において、健康長寿の延伸のためにエネルギーやどのような栄養素をどれくらい摂取すれば良いかを、年齢や性別ごとに示したガイドラインがあります。これは食事摂取基準と呼ばれています。
この食事摂取基準で取り扱われている生活習慣病は
①高血圧 ②脂質異常症(俗にいう高脂血症)③糖尿病 ④慢性腎臓病
の4つを指します。骨粗鬆症は含まれていません。その理由としてはエネルギーや栄養素の摂取との関係について明確なエビデンスがある疾患を取り扱っているためです。
確かに骨粗鬆症とカルシウム・ビタミンDとの関連は報告されていますがまだ確立されたエビデンスに乏しいため生活習慣病に含まれていないのではないか、と思います。近いうちに骨粗鬆症も生活習慣病として取り扱われる可能性は十分あるでしょう。
動脈硬化、糖尿病と骨粗鬆症(骨質)も関連しているという報告もあります。
現在の日本人の食事摂取基準ではエネルギーの指標にBMIが用いられています。適正な体重を維持することが必要であり低体重は骨粗鬆症のリスクとなります。
参考までに年齢別の目標BMIを示します。
年齢 目標BMI
18−49歳 18.5−24.9
50−64歳 20.0−24.9
65−74歳 21.5−24.9
75歳以上 21.5−24.9
気づいた方もおられるかと思いますが、下限値が年齢階級が高くなるにつれて高くなっています。これはフレイルの予防の観点から目標値が設定されているためで、すなわち高齢者では低体重はフレイルのリスクが高くなることを表しています。
体重を維持するためには単純で、
エネルギー摂取量>エネルギー消費量 となればよく、減量したければ
エネルギー摂取量<エネルギー消費量 とすれば良いです。
主な栄養素と摂取目安量(特に骨に関連するものを抜粋)
次に主な栄養素と骨との関わりについてお話しします。骨粗鬆症では適正なエネルギーや栄養素の摂取が基本となります。その中でも
タンパク質→65歳以上では、その他の年齢と比べて総エネルギーの15−20%を目安とするようになっている
ビタミンD→米国・カナダの食事摂取基準に準じて15μg/日となっている。ただしこれは日光を浴びることで皮膚で産生されるビタミンD量を考慮していないため、普通に日を浴びる場合、65歳以上では8.5μg/日が食事摂取量として目安になっている
カルシウム、ビタミンKについては目安量が設定されておらず、推奨量としてそれぞれ700mg/日、150μg/日となっている
日常診療の中で、外出できる方には極力外に出て日の光を浴びるよう促していますし、家の中であっても日向ぼっこをするように勧めています。
食生活もバランスの良い食事、肉(タンパク質)もしっかり食べるし魚も良いです。時には飲み込みやすい大きさや形状にする工夫も誤嚥防止に必要でしょう。
本日は以上です。
(参考文献 上西一宏;The Journal of Japan Osteoporosis Society Vol.6 No.2 2020)
むつみクリニック 整形外科・骨粗鬆症専門外来
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