上腕二頭筋腱腱鞘炎
<概念>
上腕二頭筋腱腱鞘炎は、種々の要因によって結節間溝部で上腕二頭筋長頭腱の滑動機構の破綻が生じて起きる腱鞘炎です。
<病態>
上腕二頭筋腱は、肩甲骨烏口突起より起始する短頭腱と、関節窩上結節より起始する長頭腱より成りたちます。長頭腱は結節間溝内で水平方向から垂直方向に方向を変え、その解剖学的特性により、結節間溝部で機械的刺激を受けやすく、スポーツ活動による上肢挙上や内外旋の反復動作や、同部位での何らかの長頭腱滑動機構の障害で、腱炎あるいは腱鞘炎を発生します。
さらに本症状は、スポーツやoveruse(使いすぎ)以外にも、変性疾患として腱板損傷にもよく合併することが知られています。
<症状>
肩関節前方(特に結節間溝部)に圧痛が存在することが多い。可動域制限はほとんどみられません。また、スポーツ選手では投球時にcocking phaseからfollow-through phaseにかけて上腕二頭筋に沿った放散痛を認めます。
<画像所見>
画像上は、単純レントゲン検査の結節間溝軸写像で骨棘形成を認めることがありますが、多くは異常を認めません。MRI検査ではT2強調画像で結節間溝物質の腱周囲に滲出液の貯留を表す高信号域を認めます。
<診断方法>
臨床におけるテストとしては、結節間溝部で上腕二頭筋長頭腱にストレスを負荷するSpeedテストやYergasonテストが陽性となります。
※Speedテスト
肘関節伸展位、肩関節外旋位で抵抗に逆らって上肢挙上させた時に結節間溝部に疼痛を誘発する
※Yergasonテスト
肘関節屈曲位で、抵抗に逆らって前腕を外旋すると結節間溝部で疼痛を誘発する
<治療>
ほとんどが局所の安静と消炎鎮痛薬の投与などの保存的治療で軽快します。
しかし難治例では手術的に結節間溝部の横靱帯を切開し、上腕二頭筋長頭腱を除圧します。また結節間溝部での亜脱臼状態を呈する場合は腱固定を行うこともあります。