骨粗鬆症による椎体骨折の診断手順
本日は骨粗鬆症による椎体骨折(背骨の骨折)についてお話しします。
我々整形外科医が日常診療においてどのように患者様に接すれば良いか、についての学会誌の手引きを引用しながらわかりやすく説明していきたいと思います。
骨粗鬆症性椎体骨折
初めに、骨粗鬆症性椎体骨折は骨粗鬆症に起因する最も頻度の高い骨折で、日常診療で非常に多く遭遇します。(ほぼ毎回といっても過言ではありません!)
そのため患者様QOLや健康寿命に対し大きな責任を負っているのが、整形外科医だと思っています。ただの骨折ではなくて、保存療法(手術以外の治療)が上手くいかないと骨癒合不全や偽関節(※)につながり痛みの原因となったり、後弯変形による慢性疼痛や身体機能障害、見た目の醜悪さが生じる事になります。
(※)偽関節とは保存治療を継続しても骨癒合が期待できない状態。
遅発性麻痺 遅発性圧壊
最近では遅発性の神経麻痺と言って骨が脆いことで徐々に骨折した椎体が潰れることで脊髄を圧迫し、足に力が入らない、動かせない(下肢麻痺)や排尿や排便の感覚がない、失禁する(膀胱直腸障害)、足の感覚がない、痛み、温度を感じない(感覚障害)といった症状にまで至る方も増えています。
どのようなことを念頭に入れて診療にあたっているか
以下、診察にあたっての問いかけとそれに関する答えを紹介します。
Q1 椎体骨折の診断に重要な症状、疼痛部位は?
- 体動に伴う疼痛が新鮮椎体骨折に特徴的
- 脊柱から少し離れた肋骨付近の疼痛や側腹部痛、上臀部痛を訴える事もある
- 高齢者の脊柱付近の体動時痛を診たら、常に新鮮椎体骨折の可能性を念頭に置いて診察すべきである
- 骨癒合が得られず遷延治癒、癒合不全、偽関節となった骨折椎体は後方の脊柱管へ突出し、神経障害をきたす事がある。
Q2 椎体骨折の診断は単純レントゲン撮影だけでよいか?
- 単純レントゲン2方向のみでは異常可動性を捉えられず新鮮椎体骨折を見逃す可能性がある
- 体位を変えた側面像や短期間内の2回の撮影での診断が望ましい
- MRIを撮影すると診断率が向上する
Q3 椎体骨折の鑑別診断は?
- 腰背部痛の原因となる他科の疾患も念頭に入れる必要がある
- 鑑別診断として原発性・転移性脊髄腫瘍や感染症を考える必要がある
Q4 目指すべき治療のゴールは?
- ゴールは適切な疼痛コントロールをADL/QOLの改善、骨折部の癒合、脊柱変形の防止である
- 現実的なゴールは可能な限り骨折が生じる前に近い状態にすること
- 既存椎体骨折は新鮮椎体骨折のリスクを高めることから、続発する骨折を防止することにより、更なる症状や障害の悪化を防ぐこと、も重要
最後に
病院であれクリニックであれ、整形外科医であれば上記内容は当たり前のように念頭に入れて治療していると思います。
大前提として椎体骨折を起こさないようにすることが大切ですが、骨折を起こした場合でも、指摘された時点での骨粗鬆症治療の介入が必須です。
たかが骨折として見過ごすことのないように注意が必要です。
本日は以上です。
当院での骨粗鬆症治療についてはこちら
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12月5日(土)12月19日(土)に私が整形外科診療を行います。また来年1月以降は毎日整形外科診療を受け付けています。もちろんインフルエンザワクチン接種も可能です。電話予約で受け付けていますのでご利用ください。
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むつみクリニック 整形外科・骨粗鬆症専門外来
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