本日は高(気)圧酸素治療についての話になります。
高気圧酸素治療(hyperbaric oxygen therapy,HBO)は高気圧環境での純酸素吸入により溶解型酸素を増大させ末梢組織の酸素化を図る治療法になります。有効性については国際的にも評価されています。
我が国では「2気圧以上60分以上の酸素吸入」にて保険適応となっています。
とりわけ、最近はスポーツ領域でのHBOが注目されています。
特に靭帯損傷、肉離れ、足関節捻挫、打撲などの軟部組織外傷に対するHBOについて色々な報告がされています。
HBOの効果
- 血液の液体成分である血漿内の溶解型酸素分圧を上昇させる
- 空気塞栓やガス壊疽など病的な気体に対する薬理効果を発揮する
- 末梢動脈疾患などの末梢組織の低酸素環境の酸素化が期待できる
- 細菌感染症では活性酸素量を増大させ、酸素依存性殺菌能を高める
- 血管新生の促進により創傷治癒促進効果がある
- ガンなどの放射線治療後の晩期障害(hypovascular,hypercellular,hypoxia)に高い有効性を認める
このように様々な効能効果があります。
臨床の場面ではガス壊疽、壊死性筋膜炎、慢性骨髄炎などをはじめとする重症軟部組織感染症に対し国際的にもHBOは適応とされています。
さらに糖尿病性足病変など末梢動脈疾患での皮膚潰瘍に有効性もあるため下肢切断率を低下させるという報告もあります。
スポーツ外傷に対するHBOの効果
スポーツ外傷の中でも、靭帯損傷、肉離れ、打撲などの軟部組織急性期におけるHBOについて様々な報告がされています。
軟部組織急性期におけるHBOの効果としては以下のものが挙げられます。
- 局所低酸素環境の改善効果
- 腫脹軽減効果
- 損傷組織の治癒促進
①靱帯損傷に対する効果
例えばラグビートップリーグ選手のMCL(内側側副靱帯損傷)2度損傷に対するHBOの臨床的検討では試合形式の競技復帰までの治療期間はHBO施行群とHBO未施行群ではHBO施行群の方が約25%治療期間の短縮および早期競技復帰が可能だったと言う報告があります。
②骨格筋損傷・肉離れに対するHBO
臨床的報告では、ラグビートップリーグ選手らを対照とした試験でハムストリング損傷に対する有効性を検討したものがあります。過去の報告よりも治療期間を短縮する可能性が示唆されたものの、プラセボ群設定が困難なことから研究の質としては高くなく、今後良質な臨床報告が出ることが期待されています。
まとめ
スポーツ外傷の多い軟部組織外傷の急性期治療の大原則はRICE治療です。
※RICE…Rest(安静) Icing(冷却)Compression(圧迫)Elevation(挙上)
HBOは損傷組織の低酸素環境を改善し血管透過性の改善と腫脹減少により末梢循環動態を改善することから外傷急性期にHBOを適用することでの意義はあると考えられています。また早期回復と早期競技復帰も期待されるためスポーツにおける急性期治療の一つとして位置付けられます。
本日は以上です。
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