ここ一段落と冷えてきましたね、ウイルスは低温、低湿度の環境で活発化するので家の中は暖かく加湿することを忘れずに過ごしましょうね。
さて、今回は前回の話の続きになります。
塩分(食塩)と腸内細菌叢
胃癌はヘリコバクターピロリ菌が原因で起こり、高塩分摂取がそのリスク因子となる事が広く知られています。塩分の取りすぎでTh17サイトカインが活性化し、全身の炎症を悪化させるというメカニズムに腸内細菌が関与することが明らかにされつつあります。また、ある無作為化プラセボ対照試験の結果、血中の短鎖脂肪酸を上昇させることが明らかになりました。短鎖脂肪酸の上昇は血圧低下や血管の柔軟性を向上させます。これは腸内細菌が食物繊維を資化(発酵)させて結果であると予想されています。さらにナトリウム(塩分)摂取の低下による降圧効果は男女ともに観察され、女性の方がより大きな変化を認めました。
薬剤と腸内細菌叢
- 抗生物質
抗生物質は腸内細菌叢の変化を引き起こす事が最もよく知られています。
短期間の抗生物質の投与では腸内細菌叢は抗生物質投与前の状態に戻ることが多いですが、投与前とは異なる状態になる可能性も示唆されています。抗生物質の暴露後に現れる新しい腸内細菌叢は感染症、アトピー性疾患、メタボリックシンドロームに対する宿主の感受性を高めるとされています。
容易に想像がつくと思いますが、抗菌薬や抗生物質の妊婦への投与は出生後も腸内細菌叢に影響を与えます。他には、英国の医療電子データを用いた調査結果によると、抗生物質の服用期間が長いほど結腸癌のリスクが高まることが示されました。
- プロトンポンプ阻害薬(PPI)
PPIの長期投与により、腸管炎症を抑制することが報告されている細菌群が減少することが報告され、PPIの長期投与によりdysbiosis(腸毒素症)が誘導されているようです。しかし十分なデータも少なく今後検討する余地はあるかと思われます。
人工甘味料と腸内細菌叢
人工甘味料のサッカリンやスクラロースの1日許容量を継続摂取させるとブドウ糖不耐性、つまり食後に上がった血糖が下がりにくくなることが報告されました。ただしこれはマウスでの実験です。しかしながら人工甘味料も腸内細菌叢を変化させることで、糖尿病に対して悪影響を及ぼす可能性が考えられています。
以上2回にわたって腸内細菌に関する話をしました。
個人の腸内細菌叢は3歳までに完成すると言われており、母子環境の影響が最も大きい、さらに高脂肪食、低食物繊維食による腸内細菌叢の変化が生活習慣病の発症、増悪に影響を与えます。
糖尿病であれ骨粗鬆症であれ、ロコモ、サルコペニアも食生活が大きく関与してきます。これを機に食に対して意識を改めて見てはいかがでしょうか?
本日は以上です。
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12月5日(土)
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