本日は気温も高く暖かいですね。
今回は生活習慣病と骨折リスクについてお話ししたいと思います。
骨密度以外に重要な骨強度の規定因子として骨質が注目されています。
この骨質は、生活習慣病と非常に密接な関わりがあります。
特に2型糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)について述べさせていただきます。
2型糖尿病と骨折リスク
2型糖尿病ではBMD(骨密度)に低下が認められなくても骨折リスクが上昇することが明らかになっています。その原因として、糖尿病ではコラーゲン繊維間に終末糖化産物(AGEs)が蓄積され骨のしなやかさが失われ骨量を維持したまま骨強度が低下します。さらにAGEsは骨芽細胞や骨細胞の機能低下にも関与するとされています。
慢性腎臓病(CKD)と骨折リスク
末期腎不全や透析患者では骨折リスクが高いことはよく知られています。CKDにおける骨質劣化の機序としては、二次性の副甲状腺機能亢進症とそれに基づく骨代謝回転の亢進、皮質骨多孔化が関連するとの報告があります。CKDは糖尿病と並んで酸化ストレスが増大する疾患で酸化ストレスやAGEsが骨脆弱性に関連している可能性が指摘されています。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)と骨折リスク
COPDでは全ての部位の骨折リスクが上昇します。特に胸椎骨折の頻度が高いと報告されておりBMD低下だけでなく骨質の劣化が関連していると思われます。COPDでは一般的な骨粗鬆症、骨折危険因子に加えてCOPDの主な原因となる喫煙が骨折リスクになります。さらにCOPDでは全身性の慢性炎症が存在し炎症性サイトカインは骨代謝にとって悪影響を及ぼします。
COPDの治療ではステロイドが投与されることが多いです。ステロイドは明らかな骨折危険因子であり、たとえ吸入ステロイドであっても若干骨折リスクが上昇すると報告されています。
ただ骨折ばかりに焦点と絞っては木を見て森を見ず、となってしまいます。
ステロイドを使用することでむしろ全身性炎症を抑制しCOPDの症状を改善させることがあるからです。
まとめ
これらの知見を踏まえた上で「生活習慣病骨折リスクに関する診療ガイド2019年度版」では生活習慣病を持つ患者さんにおいて積極的な骨粗鬆症スクリーニングに努め、特に2型糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)で骨折リスクが高い方には薬物治療を開始する事、まら治療開始に至らなくとも骨折リスクが高いことを念頭に骨折危険因子の管理および骨粗鬆症予防の生活指導、定期検査が推奨されています。
本日は以上となります。
(引用文献 生活習慣病骨折リスクに関する診療ガイド2019年版;金沢一平ほか)
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