骨粗鬆症の鑑別診断は二つの視点から考える必要があります。
一つ目は骨粗鬆症かそれともその類縁疾患か、二つ目は原発性骨粗鬆症か続発性骨粗鬆症かという点です。
骨粗鬆症は本人さえも気づかないうちに罹患、進行する疾患です。これは予防することが難しいと言えます。年齢だけを考慮して骨粗鬆症検査に誘導し診断に至ることもありますが、検査体制が整っていない場合や他施設に検査を依頼する場合には患者様が納得するだけの理由が必要です。
つまりなぜ骨粗鬆症と診断できるのか・またはその可能性があるのか説明できなければいけません。
骨折歴、生活歴、月経歴および併存疾患は骨脆弱性に気づく上で重要な要素です。
既存骨折に関する情報が重要なのがいうまでもなく、橈骨遠位端骨折や椎体骨折、大腿骨近位部骨折、上腕骨近位部骨折は骨脆弱性が原因であることが多いです。また両親の大腿骨近位部骨折や常習的なアルコール摂取は骨粗鬆症の原因となります。
カルシウム摂取量が少ないと血清カルシウム値を維持するために非活性型ビタミンDである25(OH)Dが活性型の1,25(OH)2Dに変換され、腸管からのカルシウム吸収と尿細管からのカルシウム再吸収を促進し骨から血中へのカルシウム放出を促進させます。そのため血清の25(OH)Dが消費されて低下し骨粗鬆症が進行します。ビタミンDを併用して内服している患者様も多いですが、こういった理由があるからなのです。
早期閉経や卵巣摘出手術の既往はエストロゲン(女性ホルモン)の低下を示唆し年齢に関わらず骨粗鬆症を引き起こします。また乳がんに対するアロマターゼ阻害薬(アンドロゲンからエストロゲンへの変換酵素阻害薬)も骨粗鬆症の罹患・増悪の原因となります。心房細動や弁置換術後のワルファリンの内服により骨密度低下がなくても骨が脆弱化します。併存疾患に関節リウマチや甲状腺機能亢進症、糖尿病、肺気腫があれば続発性骨粗鬆症に罹患している可能性があります。
以下にも注意が必要です。
- 膝関節特発性骨壊死
- 膝関節軟骨下骨折
- 急速破壊型股関節症
これらも骨粗鬆症が原因となって生じていることがあります。抗てんかん薬の服用やステロイド薬の内服、痩せ(やせ)も挙げられます。
さらに列挙しますと
- 身長低下、円背、亀背→椎体骨折を示唆
- 腎機能低下
→骨脆弱性の進行から副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌が促進
→骨粗鬆症に類似し腎性骨異栄養症に陥る
まとめ
以上で述べた疾患、病態意外にも実はまだ存在しますが、要するに骨粗鬆症は軽視すべき疾患ではなく誰もが避けて通れない、治療を要する生活習慣病だと捉える必要があります。
本日は以上になります。
(参考文献;骨粗鬆症の鑑別診断 田中伸哉:The Journal of Japan Osteoporosis Society Vol.7 No.1 2021 17-20)
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