今回は久しぶりに骨粗鬆症の話になります。
2018年時点において、日本で要介護および要支援認定を受けている人は658万人になります。そしてその原因としてなんと約25%が骨折や転倒などの運動器の障害によると分かっています。
高齢者の脆弱性骨折はQOLの低下だけでなく、生命予後にも影響を及ぼすことは以前のブログで述べたとおりです。(→骨粗鬆症と骨卒中)加えて国内外の研究で脆弱性骨折の既往哉大腿骨の骨密度の低下が死亡率の上昇につながることも示されています。
最近のニュースで高齢者の医療費負担割合を2割に引き上げるとの報道が盛んに報じられています。これは年々増加する高齢者の医療費が医療経済に大きな影響を与えていることにも関連しています。
2015年の後期高齢者の医療費は約15兆2000億円となっています。このうち骨折による入院にかかる費用は約7000億円です。さらに後期高齢者の疾患別の入院費の変化率で表すと、わかりやすくなります。
骨折にかかる入院費は5年で約20%上昇し、他の疾患に比べ増加していることがわかります。(下の図の赤線グラフを参照)
医療費の面からも骨折の予防は絶対に必要なのですが、残念ながら骨粗鬆症治療の介入率、継続率は我が国では依然として低く、欧米には及びません。
65歳以上の新規大腿骨近位部骨折患者2300名以上を対象に、骨折後1年間の骨粗鬆症治療状況を調べた国内の研究では、治療を受けた人は2割に満たず、6割近くが未治療であったことが報告されています。
私も急性期から慢性期、地域の医療機関での外来業務などを経験して骨粗鬆症治療の継続率の低さを実感してきました。
受傷し、骨折の手術が必要なため急性病院で治療を受ける
↓ ①
リハビリ病院へ転院、または自宅退院あるいは施設入所
↓ ②
急性期病院または後方病院の外来でフォロー(③) 場合によりフォロー終了(④)
①のタイミングではなかなか骨粗鬆症治療は介入しづらく、あっても後方医療機関の②でのタイミングで初回の骨粗鬆症治療の介入となるでしょうか。
④になってしまうことは避けなければなりません。
骨への治療なく放置状態となることで再骨折を来す危険性が高まります。
望ましいのは③のタイミングで継続して骨粗鬆症治療を受けることです。
こういった現状を打破するために数年前より諸外国同様、骨粗鬆症リエゾンサービス、という取り組みが日本でも各地で行われるようになってきました。
これについては次回述べたいと思います。
本日は以上です。
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