手術とロコモの関係
超高齢を迎えた我が国では、関節や脊椎などの運動器障害による症状を訴える患者様が増加しています。そのため早期発見、早期治療介入が非常に重要となることは以前お話しした通りです。特に整形外科領域では、ロコモティブシンドロームの原因となる3大疾患があります。
①腰部脊柱管狭窄症
②変形性関節症
③骨粗鬆症
この三つの中でも特に、腰部脊柱管狭窄症、変形性股関節症、変形性膝関節症は、ADL障害が著名になれば手術適応となる疾患です。
今回はこれらの疾患について手術治療がどのようにロコモに影響を与えるのか、という観点でデータを元にお話しできればと思います。
手術とロコモ度の関係
腰部脊柱管狭窄症患者166名に対して手術を施行し、術前、術後半年、術後1年のロコモ度を縦断的に評価したところ、立ち上がりテストについては手術前後で有意差を認めなかったものの、2ステップテストとロコモ25についてはそれぞれのスコアが有意に改善していました。さらに、術前と比較すると半年後、1年後においてロコモ度は有意な改善を示していました。
保存治療(手術しない治療法、リハビリや体操、薬物療法など)と比較しているわけではないのですが、手術がロコモ度の改善に寄与していることは言えそうです。
おそらくは手術によって腰部脊柱管狭窄症の症状が改善し、日常生活において活動度が向上することが術後半年や1年後にロコモ度が改善している結果につながると思われます。
その他にも腰部脊柱管狭窄症患者に対する手術療法の有効性を示す報告があったり、術後の糸状面バランス不良(横から見た脊椎の配列の異常の事)がロコモ度改善不良の関連因子とする報告もあります。
特に2ステップテストに関しては腰部脊柱管狭窄症の重症度と強く相関すると言われています。
変形性股関節症に関しては88名のTHA患者を2年間経過観察したところ、17%の患者がロコモから脱却し、56.8%においてロコモ度が改善したという報告があります。
ロコモ度テストの中でもロコモ25と2ステップテストでは腰椎手術、THA、TKAによってロコモ度が改善している一方で、立ち上がりテストでは、THAのみでロコモ度が改善しており疾患の特徴が反映されています。
まとめ
以上の研究データが表すように腰部脊柱管狭窄症および変形性股・膝関節症に対する手術はロコモ度の改善に寄与していることが推測されます。
もちろん手術適応は慎重に評価されるべきではあるものの、手術はロコモ対策の有用な選択肢であると考えられます。
本日は以上になります。
参考文献; 日整会広報室ニュース 藤田順之先生(藤田医科大学医学部整形外科学講座主任教授)のコラムより抜粋
むつみクリニック 整形外科・骨粗鬆症専門外来
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