前回、フレイルについて述べましたが、今回は「サルコペニア」についてお話ししたいと思います。
医師でもフレイルとサルコペニアについて混同している方も少なくありません。わかりやすく説明するとサルコペニアが進行する事でフレイルに至ると考えるとシンプルです。
(つまりフレイル→サルコペニアでなく、サルコペニア→フレイルとなる)
サルコペニアの概念としては当初、加齢に伴う筋肉量の減少とされていました。ですがその後の研究によって、筋肉量の減少だけでなく、筋力低下や身体機能の低下も含まれる様になってきました。
フレイル同様にサルコペニアの頻度は加齢に伴って増加するのですが、主に筋肉量の低下は下半身に認められやすいという事がわかってきました。
日本サルコペニア・フレイル学会が発表したサルコペニア診療ガイドラインでは、
①高齢者(60歳または65歳以上)を対象に握力および歩行速度を測定する
②握力低下(男性26kg未満、女性18kg未満)歩行速度低下(0.8m/秒未満)のどちらか一方あるいは両方
③ 2を満たす場合に筋肉量測定を行う
これらの手順で診断を行う事が決められています。
サルコペニアは高齢者の身体機能や買い物、長距離歩行などの手段や日常生活機能の低下の大きな影響を与えています。
フレイルの記事でも書いたのですが、疾患概念としては通ずるところが多く、混乱するかも知れません。
今回の記事で知って頂きたいことは、筋力や活動度の低下、その他の要素が互いに悪循環や連鎖を形成しているという事です。これはフレイル・サイクルと呼ばれています。(下の図を参照)
(健康長寿ネットより引用)
また、骨粗鬆症に関しても上記サイクルに入っている事がわかると思います。筋肉と骨との関係性(難しくいうと「筋骨連関」と言います)については様々な報告があり、
骨粗鬆症を有する人の方がサルコペニアを合併する割合が多いという報告や、
ビタミンDや性ホルモン、GH/IGF(growth hormone/insulin-like growth factor)-1が骨格筋や骨代謝の両方に作用するという報告があります。
この中でも、ビタミンDの骨格筋に対する作用の可能性、血中ビタミンD濃度低値と易転倒性(転倒しやすい)、サルコペニアになりやすかったりするという報告が注目されています。
ビタミンDとサルコペニアの関連性については、骨格筋に対する直接的な作用を有する可能性が示唆されています。しかしビタミンD投与による筋量や筋力増加効果、転倒予防効果については、ビタミンDレベルが低い高齢者においてのみ認められる事もあり、確立されたデータはないというのが現状です。
本日は以上です。お読み頂きありがとうございました。
(参考文献 小川 純人;高齢者のフレイル・サルコペニアと骨粗症:J.Jpn.Orthop.Assoc.94:485-490 2020)