「痛み」を主訴に来院される患者様は非常に多いです。整形外科なのであ当たり前といえば当たり前なのですが、腰痛、関節痛、骨折の痛み、打撲の痛みなど多岐に渡ります。
その中でも今回は特に慢性痛にポイントを絞ってお話しします。
慢性痛を持つ患者様にとっては、器質的な疾患(例えば打撲や骨折など原因がはっきりしている)だけでなく心理的・社会的な因子が複雑に絡み合っている事も多く対応に苦慮する事も多いのが現状です。
慢性痛とは
国際疼痛学会では、
治療に要すると期待される時間の枠組みを超えて持続する痛み
と定義されています。我々がよく出会う疾患である骨粗鬆症性圧迫骨折、変形性関節症、関節リウマチ、腰部脊柱管狭窄症、腰痛症、椎間板ヘルニアなどは慢性痛に移行することがあります。
特にこの中でも最も多いものは腰痛です。
皆さんの中でも日頃から腰痛で悩んでいたり生活に支障を来たしている方もいらっしゃるかと思います。
こう言った慢性痛によって引き起こされる影響としては疼痛治療のための医療費や勤労できないための経済的損失があります。
自身の経験からも痛みを主訴とする患者様に対しては、まずは器質的疾患の有無を調べ、その痛みが果たして本当にその疾患由来のものであるかを診察所見、検査結果などから判断します。
そんな中でも、説明のつかない、詳細な検査をするにも原因がわからない事もよく経験します。そう言った場合は、理屈をつけて説明する事は可能ですが、今現在一番困っている痛みに対して、
どのようなアプローチ(リハビリ、投薬、処置など)で痛みを緩和させることができるか?
を考えます。
慢性痛における目標は、痛みをゼロにする事ではなく、痛みとうまく付き合いながら日常生活および社会活動を送る事だと言われています。
高血圧や糖尿病などの生活習慣病は薬物療法、食事療法、運動療法を行い、多職種で連携して治療にあたります。それと同様に慢性痛においても運動、睡眠、食事など生活に目を向けたトータルマネージメントが求められています。そして痛みはゼロにならないかもしれないが、社会や家族の中で役割や居場所が作られる事で患者様に痛みを受け入れ、うまく付き合えるようにする事が慢性痛治療へのカギとなっていると考えます。
その一方で医療者側も患者様の痛みに共感し、症状や治療目標を共有していく事が重要である事は言うまでもありません。
(参考文献;Tomoko Tetsunaga;J.Jpn.Orthop.Assoc.94:593-600 2020)