久しぶりの骨折各論です。
今回は年頃のお子さんをお持ちの方が、もしかしたら遭遇するかもしれない肘関節の骨折になります。
その中でも最も多い上腕骨カジョウ骨折について説明します。
受傷機転として多いのは、転倒して手をついた、うんていから落ちて手をついた、肘を直接ぶつけたといったエピソードです。症状は肘の痛み、はれ、動かせないため親が心配して受診することがほとんどで、たまに救急車で来たりもします。
診断
- 正確な肘関節レントゲン撮影
- 整復操作前の神経麻痺や循環障害のチェック(手指の痺れ、感覚障害、動脈触知)
治療
転位(ズレ)が軽度であればギプス治療を行い、骨癒合を目指します。個人差はありますが約3週間程度行います。多少のズレであっても神経障害や循環障害がなく、整復操作で良好な整復位が得られれば同様にギプス治療を行います。
転位が大きかったり、神経血管障害を有する場合は、無理な整復操作は行わず、腋窩から手掌まで緩めに固定し手術可能な病院へ紹介します。
手術
全身麻酔下に腹這い(腹臥位といいます)となり、透視下に整復を行ったあと良好な整復位であれば、その形を維持したまま金属のピン(約1.5-2.0mm)で固定します。透視で再度確認し、不安定性もなく問題なければギプスを巻き手術は終了となります。
合併症と予後
神経麻痺の発生頻度は7.7%で内訳は橈骨神経41%、正中神経36%、尺骨神経23%と言われています。重篤な合併症にVolkman拘縮(フォルクマン)があり、これは血流障害による阻血効果により手指が拘縮することでき研究の筋膜切開が必要となります。
リハビリ
ギプスを巻いた後は肘が動かせないため、それ以外の手指自動運動を行います。そうすることで手指の血行を良くしむくみを防止するとともに運動障害の有無の判別に役立ちます。
ギプスが取れてからは担当医の判断の元で少しづつ可動域訓練を行うこととなります。無理な他動運動は厳禁となります。
(一般社団法人 日本骨折治療学会より転載)
注意すべきなのは、一旦保存療法でギプスを巻いたあと、ギプス内で転位を来すケースです。そのため1週間毎に受診しレントゲンでのチェックをしてもらう方が良いでしょう。
本日は以上です。
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