閉経後の体重変化は個々人の健康に大きな影響を与える可能性があります。女性は50歳を過ぎると基礎代謝が低下したりホルモン環境が変化することで体重が増加しがちになります。
閉経後の体重増加がリスクとなる疾患の代表として乳ガンがあります。さらに糖尿病や変形性膝関節症との発症も指摘されています。
反対に閉経後に体重が減少する、いわゆる「やせ」は骨粗鬆症の重大な危険因子とされ、骨密度低下や大腿骨骨折の発症との関連性が報告されています。
今回のブログでは、閉経後の体重変化とその後の骨密度の関係を調査したデータを論文から引用しながら紹介したいと思います。
方法
前提条件として2014年から2020年までにガン検診と行った症例で骨密度測定を希望した患者を対象としています。閉経前後時点の体重変化を調査し骨密度を第2〜第4腰椎および全大腿骨近位部、大腿骨頚部の3箇所測定し、得られた結果を統計的に処理したものです。
結果
腰椎部では骨密度と体重との関連性が有意に認められなかったものの、全大腿骨近位部および大腿骨頚部においては59歳以下、65-69歳、70-74歳において有意な差が認められました。
つまり、骨密度は体重増加群で高値を示し、体重減少群で低値を示しました。その一方で75歳以上では有意な差が消失し骨密度は低下傾向を示すことがわかりました。
以上の事を踏まえると閉経後に体重が減少する女性に対しては定期的に骨密度測定を行い、生活指導、栄養指導を始め必要なら骨粗鬆症治療を介入する必要があることがわかります。
また、75歳以上を過ぎれば体重に関係なく骨密度が減少傾向を示したため、骨密度を再確認し必要に応じてより強力な骨粗鬆症治療を介入すべきではないかと思います。
まとめ
- 閉経後に体重減少をきたす女性に対してはしっかりとした骨粗鬆症の治療戦略を示す必要がある
- 75歳以降では体重増減にかかわらず、定期的な骨密度測定および骨粗鬆症治療の見直しも検討が必要である
本日は以上となります。
お読みいただきありがとうございました。
(参考文献 The relationship between postmenopausal weight change and subsequent bone mineral density;Hiroshi Wada,Tatsuhiko Kuroda:The Journal of Japan Osteoporosis Society Vol.7 No.2:259-264,2021)