化膿性脊椎炎

  • HOME
  • 化膿性脊椎炎

概念

かつては重篤で致死的疾患であった化膿性脊椎炎ですが、抗生物質の進歩により死亡率は低下し治療可能な疾患となりました。しかし病態は変化し、最近の傾向としては、

  • 中高年および高齢者の罹患例が増加している
  • ②起炎菌として黄色ブドウ球菌の割合が減少し、多種多様となってきている
  • ③悪性腫瘍に対する化学療法、ステロイド療法、糖尿病、肝腎疾患などの易感染性宿主(compromised host)での罹患例が増加している
  • ④脊椎インストゥルメンテーションなどの術後感染例が増加している

などが挙げられます。

疫学

化膿性脊椎炎は増加傾向かつ罹患年齢の高齢化がみられています。1978年の報告では平均発症年齢は39歳であり10歳代が26%を占めていました。現在では小児例が激減し50歳代後半から60歳代に頻度が高く65歳以上の高齢者例も少なくありません。症例数の増加や罹患年齢高齢化の要因としてはMRIなどの診断技術の進歩もありますが、易感染性宿主の増加や人口構成の変化によるところが大きいといえます。癌の術後や化学療法中の患者、腎透析や肝硬変、糖尿病を有する患者、関節リウマチやステロイド薬使用患者、ICUやCCU入院患者などが発症しやすいされています。

また起炎菌の変化も認識する必要があります。かつては黄色ブドウ球菌や連鎖球菌が主な起炎菌であったが、最近は表皮ブドウ球菌、Gram陰性桿菌(大腸菌,緑膿菌,

プロテウスなど)、サルモネラ、真菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA;methicillin-resistant staphylococcus aureus)など起炎菌が多様となりました。これらは内科的合併症を有し、他科疾患治療中に易感染性宿主の罹患例の増加によるところが多いです。

病態

感染経路としては大多数が血行性感染ですが椎間板手術や検査による直接感染もあります。また化膿性脊椎炎は頸椎に少なく胸腰椎に多いことは広く知られており、椎体終板部に初期病巣が形成され、炎症が椎間板内へ波及し椎間板高の狭小化を生じます。(発症後2-3週)次いで対側椎体を含めて椎体終板の破壊をきたし、化膿性脊椎炎の病像が形成されます。

症状

臨床症状から3つの型に分けられます。

①急性型

高熱、腰背部の激痛、脊柱の不橈性などの典型的な急性炎症症状で発症する

②亜急性型

37度台の微熱で発症する

③潜行(慢性)型

発熱がなく腰背部痛をきたす

これらのうち、亜急性型や潜行型では、症状発現が緩徐であるため診断が遅れることが少なくありません。さらに不適切な初期治療や診断のつかないまま抗生物質が投与され急性症状がマスクされるケースも目立ちます。

画像所見

単純レントゲン写真

初期には明らかな異常を認めません。発症後2-3週で椎間板腔の狭小化がみられその後椎体終板の破壊像が観察されるようになります。

MRI

レントゲン画像で所見が現れるより以前に、軟部組織の変化や膿瘍形成、脊柱管内への広がり所見をとらえることができます。初期変化としては、椎体終板の病変部がT1強調画像で低輝度像、T2強調像で高輝度像を示します。炎症の広がりとともに輝度変化は椎体に広がり、軽快とともに輝度変化の領域が縮小し椎間腔に限局するようになります。

MRIは臨床症状や血液生化学所見と同様に病勢の評価や治癒効果判定の指標としても役立つ有用なツールといえます。

また鑑別疾患で重要なものとして脊椎カリエスが挙げられます。MRI造影検査では膿を囲む辺縁だけが造影される辺縁増強効果(rim enhancement)がとらえられれば脊椎カリエスの可能性が高いです。しかしながら化膿性脊椎炎でも慢性の経過をたどる症例や真菌例では膿瘍が形成されrim enhancementがみられる可能性もあり注意が必要です。

治療

保存療法

化膿性脊椎炎に関しては化学療法と局所安静による保存的治療が原則となります。また何らかの基礎疾患を有している症例も多いため内科的治療も併用して行います。局所安静には臥床、ギプス治療、コルセットなどが選択されます。臨床症状や採血での炎症反応の推移を見ながら安静度および抗生物質の投与期間などを決めてゆきますが、一般的に長期的な治療となることが多いです。

手術療法

進行性の麻痺例、膿瘍形成例、保存治療抵抗例、椎体破壊のために脊柱不安定性を生じる例などが手術療法の適応となります。近年、術後害固定の簡略化、早期離床、術後変形の予防、骨癒合率の向上などを目的として脊椎感染症に対して脊椎インストゥルメンテーション併用の有用性が報告されています。強固な固定は感染巣の鎮静化にも有効と考えられています。しかし感染が再燃すれば治療の長期化は避けられないことは留意すべきで、使用は慎重であるべきです。

代表電話番号

06-6686-7623 06-6686-7623

24時間受付

WEB予約WEB予約

在宅でも簡単

WEB問診WEB問診

Instagram骨粗鬆症サイト