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なかなか改善しない痛みについて
整形外科に寄せられるお悩みで特に多いのは、体の「痛み(疼痛)」です。我慢できる程度の痛みであっても、長期間続くと日常生活に大きな影響を与え、QOL(生活の質)を低下させる要因にもなります。このような持続的な痛みは、単なる症状ではなく、慢性疼痛として捉えられ、専門的な治療が必要となることがあります。
慢性疼痛
慢性疼痛とは、通常の治癒過程を超えて長期間(一般的に3~6か月以上)続く痛みを指します。必ずしも原因が明確とは限らないため、患者様の中には通院の手間や治療への抵抗から放置されている方もおられるかと思います。
しかし慢性疼痛を放置すると、血流悪化や筋肉の拘縮によって痛みがさらに強くなり、「痛みの悪循環」に陥る可能性もあります。慢性疼痛は身体的な問題だけでなく、精神的・社会的な影響も大きいため、専門的な視点での総合的なアプローチが必要です。
疼痛緩和のための治療法
神経ブロック注射
神経ブロック注射は、痛みを伝える神経の働きを一時的に遮断する治療法です。局所麻酔薬やステロイド薬を特定の神経近くに注射することで、痛みの伝達を抑制します。慢性的な痛みや、難治性の痛みに対して効果的であり、即効性があるのが特徴です。
ただし効果の持続時間は個人差があり、定期的な治療が必要な場合もあります。なお基本的には安全性が高い治療法ですが、あくまでも「他の治療法で効果が見られなかった際の選択肢」であることはご留意ください。
仙骨硬膜外ブロック注射
仙骨硬膜外ブロック注射は、腰痛や坐骨神経痛などの下半身の痛みに対して行われる治療法です。仙骨部の硬膜外腔に薬剤を注入し、広範囲の痛みを和らげます。手術を必要とせず、比較的低侵襲な治療法ですが、効果には個人差があります。慢性的な腰部や下肢の痛みにお悩みの患者様にご提案する選択肢の一つです。
トリガーポイント注射
トリガーポイント注射は、筋肉の中の過敏な部位(トリガーポイント)に直接薬剤を注入する治療法です。トリガーポイントは文字通り痛みの中心部ですので、ここに局所麻酔薬を注入することで筋肉の緊張を緩和させ、血流を改善することで痛みを軽減します。筋・筋膜性疼痛症候群や慢性的な筋肉痛に効果があり、即効性のある治療法と言えます。
内服薬
疼痛管理のための内服薬には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、アセトアミノフェン、オピオイド系鎮痛薬、抗うつ薬、抗けいれん薬などがあります。痛みの種類や程度、患者様の状態に応じて適切な薬剤が選択されます。副作用のリスクや依存性の問題もあるため、服用に際しては必ず医師の指示に従ってください。
リハビリテーション
リハビリテーションは、痛みの緩和と機能回復を目的とした総合的なアプローチです。物理療法、運動療法、マッサージなどの手技療法により、関節や筋肉のコリによる痛みの軽減を図ります。慢性疼痛に対しては、痛みへの対処法や生活様式の改善なども重要な要素となります。
長期的な効果が期待できる治療法で、薬剤に頼らない疼痛管理が期待できますが、一定以上継続する必要があります。患者様の積極的な参加が治療効果を高めますので、「こんな時に痛い」「(リハビリ後に)前よりも痛みが軽くなった」などの情報は遠慮なくお伝えください。